急激な変化のノイズの中で、ちっぽけな夢を追いかけながら、止まらない熱量に押し流されていた時代がありました。
欧米のカルチャーは、まだ遠い憧れにすぎなかったのです。
しかし、未完成の都市を貫くように高速道路が伸び、古い街並みをネオンが染め始めていました。
そんな、何もかもが荒削りで、泥臭かった中に、ロック、フォーク、歌謡曲、ジャズ、ニューミュージック。
あらゆるジャンルの音が渾然一体となって流れ込み、のちに「シティポップ」と呼ばれる音楽のルーツを形作っていくのです。
都市の歩き方を学び始めたばかりの国が鳴らした、その剥き出しの生々しいリズムこそ原点なのです。
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シティポップ前夜のトップ曲
ティン・パン・アレー ―― 『アサライ・オハラ』(Apple Knocker)
「シティポップ」という名前すら、まだ存在しなかった時代。その土台を静かに、しかし確実に築き上げていたミュージシャンたちがいました。
もし山下達郎や松任谷由実が、シティポップの「表舞台の顔」だとするならば、そのさらに深い根源は、ひとつの伝説的な音楽家集団へと行き着きます。
それこそが、ティン・パン・アレーです。
すべては、ここから始まった。
ユーミン、大貫妙子、吉田美奈子、ハイ・ファイ・セット、南佳孝、山下達郎。
そして細野晴臣、坂本龍一へ。
彼らの音楽世界は、ティン・パン・アレーという交差点でつながり、響き合っていました。
もはや彼らを「伝説」という言葉だけで片付けるのは、あまりにも小さすぎる。
ティン・パン・アレーは、シティポップがまだ名前を持たなかった時代に、その骨格を鳴らしていた音楽の母体だったのです。
注目のシティポップ前夜のアーティストリスト

はっぴいえんど
日本語ロックの地平を切り開き、フォークとロックと都市の感覚を結び直した伝説的グループ。シティポップ以前の東京の空気を語るうえで外せない存在です。

小坂忠
ソウルやゴスペルの温度を日本語の歌へ自然に流し込み、都会的なグルーヴの土台を作ったシンガー。洗練の前にある熱を感じさせます。

かまやつひろし
グループサウンズからソロまで、洋楽感覚と洒落た軽さを日本のポップスへ持ち込んだ存在。都会の遊び心を早くから鳴らしていました。

久保田麻琴
ロック、民謡、南国感覚、世界音楽を横断し、日本のポップスに異国の湿度を運び込んだ音楽家。都市の外側から新しい風を吹かせました。

井上陽水
独特の言葉選びと陰影のある歌声で、フォーク以後の日本語ポップスを大きく広げた存在。都会の孤独と幻想を同時に描ける稀有な歌い手です。

加藤和彦
フォーク、ロック、ヨーロッパ趣味、洗練されたポップ感覚を自在に横断した音楽家。シティポップへ向かう上質な遊び心を先取りしました。

サディスティック・ミカ・バンド
海外ロックの強度と日本的なポップセンスを大胆に結びつけたバンド。国際感覚と実験精神で、70年代の音を一段押し広げました。

BUZZ
爽やかなコーラスと軽やかなポップ感覚で、70年代の街角に似合う空気を作ったデュオ。都会へ向かう若い気配を自然に響かせます。

いしだあゆみ
歌謡曲の枠を越え、成熟した表現と洗練された編曲で大人の都市感覚をまとった歌手。女優としての陰影も歌に深みを与えています。

石川セリ
透明感と翳りを併せ持つ声で、都会の夜や海辺のムードをしなやかに描いた歌手。シティポップ前夜の女性ボーカルの重要人物です。

荒井由実
私小説的な感性と都会的な風景描写をポップスに持ち込み、後のニューミュージックの流れを決定づけた存在。日常を映画のように変えました。

シュガー・ベイブ
山下達郎、大貫妙子らを擁し、日本のポップスに都会的なコード感とコーラスワークを根付かせたグループ。シティポップの源流そのものです。

ティン・パン・アレー
細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆らによる職人的な音楽集団。日本のポップスに洗練された演奏と都市の質感を与えました。

鈴木茂
はっぴいえんどからティン・パン・アレーへ、ギターで日本のロックとポップスの肌触りを変えた音楽家。乾いた都市感覚を美しく鳴らします。

細野晴臣
ロック、エキゾチカ、テクノ、ポップスを横断し続ける日本音楽の巨人。70年代の段階で、都市と異国と未来を同時に鳴らしていました。

大貫妙子
繊細な声と知的なメロディ感覚で、都会の孤独や静けさを上品に描いたシンガーソングライター。シティポップの内面を形にした存在です。

吉田美奈子
圧倒的な歌唱力とソウルフルな表現で、日本語ポップスに深いグルーヴを刻んだ歌手。都会の夜を強く美しく響かせます。

ハイ・ファイ・セット
洗練されたコーラスと都会的なアレンジで、ニューミュージックの上質な側面を担ったグループ。大人のポップスの空気を広げました。

ブレッド&バター
湘南の風、洋楽的なハーモニー、柔らかなリゾート感を日本のポップスに持ち込んだ兄弟デュオ。都会と海辺を自然につなぎます。

佐藤奈々子
ジャズやボサノヴァの香りをまとった詩的な世界で、70年代後半の洗練を静かに示したシンガー。都会の余白を美しく歌います。

山下達郎
緻密なコーラス、リズム、ポップ職人としての完成度で、シティポップを象徴する存在へ成長した音楽家。源流期から光っています。

竹内まりや
明るいポップ感覚と物語性のある歌で、都市生活の喜びや切なさを自然に描いたシンガーソングライター。後の大きな流れを予感させます。

大瀧詠一
ナイアガラ的な音楽遊園地を築き、アメリカンポップスへの愛を日本語の洒落へ変えた音楽家。懐かしさと新しさを同時に鳴らしました。

松原みき
伸びやかな歌声と都会的なサウンドで、80年代の扉を開く空気をまとった歌手。シティポップが完成へ向かう瞬間を象徴します。

大野雄二
ジャズを基盤に、映画やテレビ音楽へ圧倒的な都会感と色気を持ち込んだ作曲家。日本のポップカルチャーに大人のグルーヴを刻みました。

大野雄二
ジャズを基盤に、映画やテレビ音楽へ圧倒的な都会感と色気を持ち込んだ作曲家。日本のポップカルチャーに大人のグルーヴを刻みました。

井上大輔
作曲家、歌手として幅広く活躍し、洗練されたメロディと洋楽感覚を日本のポップスへ定着させた存在。都会的な陰影を持っています。

野口五郎
歌謡曲のスターでありながら、ギターや洋楽的な表現にも強い感覚を持った歌手。歌謡とシティポップ前夜をつなぐ位置にいます。

原田真二
ロックとポップスを軽やかに横断し、若い才能で70年代後半の空気を一気に更新したシンガーソングライター。新時代の速度を感じさせます。

大橋純子
力強い歌唱とソウルフルな表現で、都会的なバンドサウンドを堂々と歌い上げたシンガー。日本の大人のポップスに厚みを加えました。

Char
鋭いギターとロックの身体感覚で、70年代の日本音楽に鮮烈な存在感を刻んだギタリスト。都市の熱と乾いたかっこよさを響かせます。

高中正義
ラテン、フュージョン、リゾート感覚をギターで華やかに描いた音楽家。日本のポップスに開放的な風景と色彩を持ち込みました。

矢沢永吉
ロックの熱とスター性を武器に、歌謡の枠を超えた男の都会感を作り上げた存在。70年代後半の空気を力強く変えました。

SHOGUN
確かな演奏力と都会的なロックサウンドで、ドラマや映像の記憶とも結びついたバンド。大人の男のグルーヴを感じさせます。

ゴダイゴ
英語詞、ロック、ポップ、国際感覚を融合し、日本の音楽に広いスケールを与えたバンド。70年代末の開かれた空気を象徴します。

世良公則&ツイスト
熱いボーカルとロックの勢いで、歌謡界に強烈なバンド感を持ち込んだ存在。都会の洗練とは別の、生々しい熱を刻みます。

桑名正博
ブルースやロックの色気をまとい、関西の熱と都会的なムードを併せ持ったシンガー。大人の匂いを強く残す存在です。

オフコース
透明なコーラスと繊細なメロディで、ニューミュージックの叙情を洗練へ導いたグループ。静かな都会の感情を美しく響かせます。

矢野顕子
奔放なピアノ、自由な歌、ジャンルに縛られない発想で、日本のポップスに独自の知性と遊び心を持ち込んだ音楽家です。

佐藤博
キーボードとアレンジの才で、都会的で透明なサウンドを作り上げた音楽家。後のシティポップの質感を支えた重要人物です。

ラジ
洗練されたボーカルと都会的なサウンドで、70年代後半の上質なポップスを担った歌手。東京の空気を軽やかにまとっています。

シリア・ポール
大瀧詠一らとの関わりの中で、ナイアガラ的なポップ感覚と透明な歌声を響かせた歌手。夢のような都市の気配を残します。

ムーンライダーズ
ロック、ニューウェーブ、実験精神を早くから混ぜ合わせ、日本のポップスにひねりと知性を加えたバンド。都市の裏側を鳴らします。

高橋幸宏
ドラマー、ボーカリスト、作曲家として、洒落たリズム感とクールな感性を持ち込んだ音楽家。後のテクノポップへの橋も感じさせます。

尾崎亜美
透明感のある声と優れた作曲センスで、女性シンガーソングライターの洗練を示した存在。ポップスに柔らかな都会感を与えました。

南佳孝
リゾート感、都会の夜、洒落たメロディを自然に結びつけたシンガーソングライター。シティポップの景色を早くから描いていました。

寺尾聰
俳優としての佇まいと低く渋い歌声で、大人の都会感を独自に表現した存在。派手さではなく余韻で聴かせる魅力があります。

杏里
伸びやかな声と海辺の開放感をまとい、後のシティポップを明るく彩る歌手。70年代末からリゾート感覚を強く響かせました。

笠井紀美子
ジャズシンガーとしての表現力で、都会的なグルーヴと大人の色気を日本のポップスに接続した存在。深い余韻を残します。

柳ジョージ&レイニー・ウッド
ブルースロックの渋さと男の哀愁をまとい、都会の夜に似合う音を鳴らしたバンド。洗練だけではない濃い大人の味があります。
シティポップ前夜について
都市はまだ若く、苛立ちと熱気を持て余していました。
警察との激しい衝突、過激化する学生運動、あまりにも速すぎる国の変化が生み出した、剥き出しの緊張感。
今の時代からは、想像することすら難しいかもしれません。
しかし、その混沌がゆっくりと収束へ向かったとき、街には奇妙な「心の虚無」がぽっかりと姿を現します。
その空白に滑り込んできたのが、新しい音でした。
ロック、フォーク、歌謡曲、ジャズ、そしてニューミュージック。
異なるスタイルが互いに混ざり合い、流れ込み、のちに世界が「シティポップ」と呼ぶことになる音楽へと、ゆっくり形を変えていく。
試行錯誤を繰り返しながら、70年代の暴風の下で生まれたその音は、やがて都市の夜を彩る、新しい風景になっていくのです。


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